～珊瑚礁の雨～

～珊瑚礁の雨～　written by BUN

わたしがいて、あなたがいる。わたしがいて、ここに仲間がいる。
今の私を私たらしめたるもの。今のあなたをあなたたらしめらるもの。

それはなに？
きっと、今までの大切な、たくさんの出来事や出会いの蓄積。

出来事ってどんな？
それは楽しくしあわせな経験、それは温かいふんわりとした感触。
それは苦しく辛い経験、それは冷たくとげとげとした感触。

出会いとはどんな？
それは、きっと、たくさんの人や、音楽や、本たち。
それはわたしの、あなたのあいだを、ただ、通り過ぎていっただけのもの。

でも、あの時感じた経験のかたち、感触の色は残っている。
時が過ぎて色あせるばかりか、もっともっとくっきりしてくる。
たくさんの出会いたちからもらったたくさんのコトバたちが、
こころに降り積もっている。

それらが、わたしの中に溶けていく。
私のこころの海に降り積もる。

それらが、結晶になって、私がいる。あなたがいる。仲間がいる。
わたしの、あなたの、そして仲間の結晶たちがひとつになる。

それはどんなかたち？どんな色？
きっと地球ができたころから、
きっと海ができたころから、
きっと初めて“生命”が誕生したころから。
今、この時まで、ずっと降り積もってきたもの。

かたちはさまざま。

でも、それらがひとつになって、ひとつのかたちになる。
ひとつの色になる。

それは、きっと、地球上の生命体が帰る場所。
お母さんのお腹のなかにいるような、ゆらゆらした心地いい空間。

わたしたち“歌仲間”にとって、そこは、ステージになり代わる。

そこは特別な場所？　いいえ、ふとしたところ。
それは、公園やグラウンド、教室、商店街の路地、、、　
どこでもなり代わる。

今の私とあなたがいれば。そして、仲間がいれば。

でも、そこは初めて行く場所ではない気がする。

そう。遠い記憶。

そう。地球が出来たころから。
この世界―宇宙が誕生したころから。

目の前にはたくさんの人たちが通り過ぎていく。

足元には、木や花や虫たちがおしゃべりをしている。
空には、雲や鳥や飛行船たちが通過していく。

わたしたちの存在に気がつかないふりをしている。

さあ、はじめよう。
地球を、この世界をやさしく包み込むために。

それはなに？
それは、歌うこと、それは、ハーモニー。
それは、あなたとわたしが、仲間が、ひとつになれる、力。
それは、この世界と一体になれる、魔法。

私に降り積もったコトバたちの結晶が、雨になる。

ハーモニーの雨になる。

わたしが浴びる。
あなたが浴びる。
仲間が浴びる。
地球が浴びる。
この世界、宇宙が浴びる。

その雨が、大地に降り注ぎ、土に返って、また新しい生命が誕生する。

新しい生命の鼓動が聞こえる。
私の、あなたの、仲間達の。
そして、地球上の、
そして、もっと大きな、この世界の鼓動がこだましている。
そして、わたしのそれと重なり始めているのが、聞こえてくる。